早期出願戦術

権利形成の最初の段階である出願手続についていうと、早期の出願処理が重要となります。
特に早期出願が求められる標準化関連特許においては、標準化会議の開催日までに出願を完了するといったことが重要となります。標準化会議は、１ヶ月から３ヶ月程度に１度の割合で開催されることから、 会議の間の１、２ヶ月の間に、つぎの会議への提案に向けた技術検討が なされることとなります。そうすると、特許出願に使える期間は多くても１ヶ月程度となることが予想されます。そのため、できるだけ早い段階で、特許事務所に依頼したほうがよいです。

標準化活動は、協調と競争の世界です。標準化は、多くの企業が同じ方向を向いて技術開発を行うため、協調関係が生まれます。そうすると、必然的に、標準技術に係わるアイデアを着想するタイミングはほぼ同時期と なるでしょう。ここに競争が生まれます。すなわち、どこの企業よりも先に出願をしないことにはせっかくの新たな発明が無駄になってしまうからです。のんびりしていては、他社が当社の提案を土台にした新たな提案をし、それを出願してしまうこともありえます。

そのような事態を防ぐためには、発明者には、標準提案前のタイムリーな発明届出を お願いするとともに、知財部門、事務所もこれに協力して短期間で明細書を作成するなど、 他社に遅れることなく出願することを心がけたほうがよいでしょう。

当所におきましては、資料や明細書仮原稿のようなものがない状態におきましても相談可能です。頭の中でうまくまとまっていなくてもよいです。また、研究開発部門の技術会議でのブレインストーミングへの参加も可能です。面談等を通じて一緒に考えをまとめ、期限内により良い形で明細書、クレームを作成し、 早期特許出願手続を完了させます。

早期に出願手続を完了させるにあたって、不可抗力的なデメリットが発生することがありえます。たとえば、特許事務所に無理を言って、あまり資料が揃っていないにもかかわらず「明日までになんとか出願して欲しい」と依頼したようなケースだと、質的にも量的にも不十分な状態で出願手続を行うような場合がありえるでしょう。

小職の経験ですが、出願するときには、後で補正なり国内優先権主張出願で担保するかなんとかなると考えてはいた ものの、いざ出願が完了すると、安心してしまって結局なにも担保しなかった、ということがよくありました。
自戒を込めて申し上げますと、出願するまでよりも、出願後のほうが、将来の中間処理や権利行使上において有用な対応ができるはずですので、これを強くお勧めいたします。

当所におきましては、出願後に、その出願についての技術提案が標準化会議にてどのような状況になりそうなのかを踏まえてクレームチャートを作成することによって、上述のような「なにもフォローしない状態」を回避することが できます。

作成したクレームチャートによっては、補正も国内優先権主張出願もしないこともあるかと思います。そうであったとしても、クレームチャートは、将来に向けての特許の設計図として、中間処理、権利行使時において大いに役立つものとなるでしょう。